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斉藤監督「柔道じゃねえ」 不可解判定に場内からもブーイング
2007年09月14日
 審判団は「ビデオ判定」を盾に取り、井上と鈴木に敗北を告げた。
 無機質な機械の目が戦況を正しくとらえたかどうか。だが、結論は動かない。
 先に仕掛けたのは井上の右足だった。やや浅い大内刈り。こらえるリネールを、井上は圧迫する。残り6秒。相手の体は確かに崩れたが、相手に振られた井上の体も畳をはう。主審は「有効」。捨て身の返し技を放ったリネールに、だった。

 約10分後、同じ悲劇に見舞われた鈴木がうめく。「何でこんなことが世界選手権で起こるのか」。鈴木の左大外刈りも確実にジリンスカスをとらえた。しかも背中をたたきつける「会心作」。だが、一本勝ちの名乗りを受けたのは、畳に落ちた後に横分けで鈴木を投げ飛ばした相手だった。

 IJFの川口孝夫審判委員は苦悶(くもん)の表情で「捨て身技は決めた方が有利。体をもっていかれるとだめなんだ」。だが、仕留めた後の返し技に軍配が上がっては、鈴木も立つ瀬がない。「技には流れがある。映像を見て、最後に背中をついたのが鈴木といわれても」と日本代表の木村昌彦マネジメントコーチ。機械はコンマ1秒の動きを映せても、勝負の機微は教えてくれない。

 試合場に駆け上がった斉藤監督が大声でまくしたて、呼応した場内もブーイング。鈴木は畳を降りようとしなかった。故障を乗り越え、酷暑の中で合宿を耐えた積み重ねがある。「あんな形ですべてを失うのは悔しい。アピールしないと自分に報いがないから」

 日本男子が誇る偉材が、不可解な判定で最高峰の舞台を去る。

 「柔道じゃねえ、こんなの」と斉藤監督。人の目と機械の目。埋めようのない溝により、2人の戦いがゆがめられたことだけは確かだ。


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